ビジネス書籍のまとめ要約ブログ

東大生が、勉強のために読んだビジネス書籍のまとめ・要約をご紹介していきます。

忙しいビジネスマンのための『ユニクロ対ZARA (日経ビジネス人文庫)』ネタバレ・要約

今回ご紹介するのは齊藤 孝浩 著『ユニクロZARA (日経ビジネス人文庫)』です。

 

近年のファッション業界を席巻する業態である『ファストファッション』。事実世界の時価総額ランキングではアパレル製造小売業部門では世界第1位がスペインの『インディテックス(ZARA)』、世界第2位が『ファーストリテイリング(ユニクロ)』、世界第3位がアメリカの『H&M』、と上位3社が全てファストファッションと、驚きの結果です。

引用:FAST RETAILING

 

ただ同じファストファッション業界でも、全く異なる運営方針を持つ『ファーストリテイリング』と『インディテックス』。本書では2社のビジネスモデルを比較し、アパレル業界の今後を予見していますので、気になる方はぜひ参考にしてみてください。

 

ファーストリテイリング(ユニクロ)のビジネスモデル

本書ではアパレルの製造フローを『企画』『製造』『販売』の3要素に大別に説明していますので、こちらの区別を用いて解説していきます。

企画

 まずファーストリテイリングのを代表するユニクロは、ご存知の通りオールシーズン着用可能で万人向けの衣服に強みを持っています。

一般的にアパレル店は流行や当日の天候などに売り上げを左右される場合が多く、在庫寡多のリスクが常に付き纏います。しかしユニクロではシーズンに左右されないシンプルな商品が数多く陳列されており、在庫が残ったとしても長期間かけて消化していく見込みが有るのは大きな強みといえるでしょう。

 

他にもヒートテックなどの機能性商品や、ディズニーやポケモンをはじめとしたコラボ商品もラインナップに加えることで、高い集客力を実現すると共に消費者を飽きさせない工夫を怠りません。

 

製造

ファーストリテイリングでは製造拠点を中国に設置することで、極めて低い原価での製造を実現しています。また少数の工場を厳選して、大量に発注する形態をとることで、細かな発注にも応じてもらえる体制を整えています。(マイケルポーターの分析にのっとれば、買い手の交渉力が高い状態とも言えます。)

 

販売

先にも述べましたが、ユニクロは長期視点での在庫消化が可能な業態ではあるものの、やはり過剰な在庫を抱えることはリスクであることに変わりはありません。

 

ユニクロの在庫過剰を防ぐ仕組みとして挙げられるのは『店舗ごとの発注体制』と『チラシ広告を用いた販売戦略』です。

 

まずユニクロでは発注は全てその地域の店長に裁量を与えており、店舗ごとでの細かい発注が可能となっています。これにより、本部が売りたい商品を店頭に並べるのではなく、その地域の消費者が欲しいと思う商品を並べるという消費者起点のマーケティングが可能となっているのです。もちろんそのためには各店舗を管轄する店長の育成は、欠かせません。

 

次にファーストリテイリング社長の柳井さんの強い要望もあり、ユニクロでは現在でもチラシ広告を用いたマーケティングに力を入れています。売れ筋商品をチラシで大々的に広告することで、有る程度の需要予測が可能となり、在庫管理が容易となります。

 

インディテックス(ZARA)のビジネスモデル

一方のスペイン発のZARAは、まさにファーストリテイリングの対極のようなビジネスモデルを採用しています。順に見ていきましょう。

企画

 

まずZARAの顧客となるのは、安価でもファッションを楽しみたい女性たちです。近年女性の社会進出が進むにつれ、彼女たちに対するマーケティングが、経済的にも社会的にも非常に重要な意味を持つようになってきましたが、まさにZARAはこの分野にいち早く乗り出したことで有名です。

 

ターゲットとなるのがファッションに敏感な女性である以上、細かな市場分析は欠かせません。彼女らが目にする大衆向けメディア媒体はもちろん、最新のファッションショー出店作品なども分析も怠りません。他にも、本社内に仮想店舗を設置することで、実際に来店してきたお客さんの目線になって、商品の魅せ方や配置方法まで徹底してこだわり抜きます。

製造

 製造はスペイン周辺や東欧の国など、本国から地理的に近い国が一般的です。日本は安価な人件費を求めて中国を中心に製造拠点を確保している一方で、ヨーロッパに製造拠点を持つことは可能なのか?と思う方もいるかもしれませんが、実は人件費や製造コストはそれほど違いがありません。日本と中国の地理的距離の近さを考えると、陸続きか海で隔たっているかの違いしかありませんので、ZARAも安価な製造拠点を陣取っていることに変わりはないのでしょう。

 

他にもユニクロとは異なり、多種少量の生産スタイルが基本となっており、また全ての輸送は空輸と、移り変わる流行に迅速に対応するためのオペレーションがこれでもかと組まれているのも特徴です。本書の説明による、製造から世界各国の店舗に行き渡るまで2週間もあれば十分とのこと。

 

また空輸を利用することで、海外進出の際にわざわざ大規模の物流拠点を設置する必要がないため、例え進出に失敗した国があったとしても即時撤退が可能など、メリットは計り知れません。

販売

ZARAの最も特徴的な点はこの販売にあると言っても過言ではありません。

 

まずZARAは広告を一切利用しません。その販管費を削減することでオシャレで高級化があるにもかかわらず、お手頃な価格で入手できるという驚異のマーケティングを実現しているのです。

 

ではどのようにお客さんを呼び込んでいるのか。その答えは『店舗立地』と『在庫管理』にあります。

 

まず店舗は都心の一等地を狙って出店します。休日やオフィス帰りの女性の目につくような立地を獲得するために、高額な固定費も決して厭いません。すなわち店舗の立地箇所が、すでに大規模な広告の役割をになっているという戦略判断です。このように思い切った戦略をとる会社は非常に珍しいのですが、その正しさはこの会社の業績の好調ぶりが大いに証明しているでしょう。

 

次に在庫管理ですが、こちらもまたZARAらしさが現れている奇抜な戦略です。なんとZARAでは、あるサイズが欠品になった瞬間に、例え他のサイズに在庫の余裕があったとしても全て店舗の裏にしまってしまうのです。これはどのような意図があるのでしょうか?

 

実はZARAは広告を打ち出さない分、極めて高頻度で在庫の入れ替えを行っています。これも先述の空輸による高速調達が要因ですが、平均して実に2~3週間でほぼ全ての在庫が入れ替わってしまうそうです。これにより、目にした商品は今買わなければ、二度と手に入らなくなってしまうという心理から、購買意欲を増大させられることに加え、目的もなしに来店した際も、以前とは全く異なるラインナップが展開されており、消費者は何度も足を運んでくれるようになるそうです。

 

逆にいうと一度、目にした商品がサイズの欠品などを理由に購入できないというのはZARAのコンセプトに大きく反します。したがって、例え機会損失が避けられないとしても、一つのサイズが欠品になった瞬間に、同一商品の全てのサイズは店舗から姿を消してしまい、再度補充がなされてから店舗に並べられます。

まとめ

今回はユニクロZARA (日経ビジネス人文庫)を参考に時価総額2TOPの『インディテックス』と『ファーストリテイリング』のビジネスモデルを比較しましたが、いかがでしたか?

 

本書では、今回ご紹介した『企画』『製造』『販売』軸のモデル分析以外にも様々な観点から2社の比較がなされており、アパレル業界のビジネス戦略やファストファッションの今後について気になる方にはぜひお勧めしたい一冊となっています。

 

私自身それほどファッションに興味を持つタイプではないのですが、非常に面白く読むことができました。気になる方はぜひ手にとってみてください。